Manji’s diary

アラフォー卍が伝えたいこと

国民皆歯科検診

先日、政府が6月にも決定する「骨太の方針」で、国民全員に毎年の歯科検診を義務付ける、いわゆる『国民皆歯科検診』が検討されていることがわかりました。改めて、『国民皆歯科検診』とはどういうものなのでしょうか。

 

 

骨太の方針の原案には「生涯を通じた歯科検診(いわゆる国民皆歯科検診)」を検討すると書かれています。各社の報道によれば、年に1回、歯科検診をできるようにする、会社の健康診断の際に唾液で歯周病のチェックをできるようにして、歯医者さんの受診につなげる、といったことが想定されているようです。

 

 

国民皆歯科検診の目的とは!?

まず国民の健康維持のためです。歯が悪くなると、ものがしっかり食べられなくなります。歯周病が進行すると心臓病や脳卒中、早産、糖尿病が悪化するリスクもあると言われています。歯だけではなく、全身の健康にかかわっています。芸能人じゃなくても、一般人でも歯は命なんです。それもあって国は80歳まで20本の歯を残す8020運動を推進しています。早めに歯周病など歯の病気に気づいて治療を始められれば、こういった病気を予防できて、結果として将来の医療費も抑制できるだろう、というのが表面上の狙いといえるでしょうか。

そして、裏の狙いは選挙だと見られています。参院選は6月22日公示、7月10日投開票になる見通しです。そこに向けた思惑が渦巻いているんですね。骨太の方針は事実上、政権与党の公約みたいなものです。歯科医の組織票を見込んでいるのです。ちなみに自民党は去年の衆院選でも「生涯を通じた歯科検診の充実(国民皆歯科検診)を進めます」と公約しているんです。これは、骨太の方針と全く同じ表現になっています。

 

国民皆歯科検診が施行されると…

現状だと、歯科検診の義務があるのは1歳半と3歳の乳幼児、小中高の生徒・児童。それから塩酸・硫酸とか歯に有害なガスのある場所で働く人だけなのです。多くの自治体で、40歳から70歳まで10年に1度の歯周病検診を行っていますが、受診する人は1割を切っているのが実情です。この検診義務を国民全員に広げるのかどうなのか、今回のニュースを振り返ると、発端は産経新聞のスクープだったのです。5月29日夜に配信された産経のネット記事には『全国民に毎年の歯科検診を義務付ける「国民皆歯科検診」』とはっきり書かれていたんです。FNNや日経新聞もこれに続く形で「義務化」と報じました。ネット上では賛成意見も少なくなかったんですが、「なぜ強制されなければならないのか」「任意でいい」といった反発も出てきました。報道に対する火消しの動きも出ていて、朝日新聞自民党の「国民皆歯科検診実現プロジェクトチーム」の中心議員のこんな声を紹介しています。「一部メディアはそう書いているけど、そういう考えは一切ない。義務化できるものではありません」「強制ではなく全国皆が年1回、歯科検診を受けられたり、受けやすくしたりするのが国民皆歯科検診。その費用は基本的に国が負担していくようにする、というのが狙いです」というふうに言っています。

 

 

全国の歯科診療所の数は6万7000を超えていて、コンビニよりも多いんです。歯医者さんも競争で大変な状況。最近はコロナ禍の受診控えで患者が減ったり、ロシアのウクライナ侵攻で銀歯に使うパラジウムが高騰したりして、歯科経営を圧迫しています。そういう大変な状況は理解できるし、対策も必要だと思いますが、今回の「国民皆歯科検診」構想は経済対策ではなく、あくまで健康対策なので、別問題として考えないといけません。トータルの医療費削減が目的なのであれば、「国民皆歯科検診で将来の医療費は少なくともこれくらい浮くことが予想されます。その分歯科検診の方に税金はかかっちゃうけど、差し引きしたら、これだけお得です」というシミュレーションを出してほしいです。ちゃんとした根拠があるなら、やれ「選挙目当てだ」「利益誘導だ」と言われても、「いやいや、この数字を見てくださいよ」と胸を張って押し通せばいいと思います。その政策で一体どれだけの効果があがったか、10年後、20年後に検証する時にも、シミュレーションと実績値を比較すれば一目瞭然かなと思います